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東京高等裁判所 昭和61年(行コ)72号 判決 1988年1月28日

千葉県印旛郡八街町富山自一三一四至一三四三番合併五〇

控訴人

青木茂

右訴訟代理人弁護士

田村徹

田中三男

千葉県成田市花崎町八一二番地一二

被控訴人

成田税務署長

中山君雄

右指定代理人

大沼洋一

永野重知

斉藤敏雄

川島和雄

右当事者間の所得税更正処分等取消等請求控訴事件について当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人の昭和四九年分の所得税について昭和五三年一月三一日付けでなした更正処分及び過少申告加算税賦課処分をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、原判決添付別紙物件目録二を本判決添付別紙物件目録二と差し替えるほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

第三証拠

証拠関係については、本件記録中証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因事実(控訴人は、昭和四九年分の所得税について法定申告期限までに、総所得金額を四九万六六九〇円、分離短期譲渡所得を一〇万円として申告したこと、被控訴人は、これに対し、昭和五三年一月三一日付けで、総所得金額を四九万六六九〇円、分離短期譲渡所得(損失)を一六万一三一二円、分離長期譲渡所得を五七三七万一八〇〇円、過少申告加算税を五七万一九〇〇円とする更正処分及び過少申告加算税賦課処分をしたこと、控訴人は、右処分を不服として、昭和五三年四月三日被控訴人に対し異議申立てをしたところ、これに対して、被控訴人は、同年六月一三日付けで右申立てを棄却する決定をしたこと、控訴人は右決定を不服として、昭和五三年七月一一日国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、同所長は、昭和五五年四月一四日、右審査請求を棄却する旨の裁決をなし、その裁決書は同年六月七日頃控訴人に送達されたこと)及び被控訴人の主張事実のうち、控訴人の総所得金額は四九万六六九〇円であること、控訴人の分離短期譲渡所得金額は(損失)一六万一三一二円であること並びに控訴人は、昭和四九年七月二二日、日本開発に対し、別紙物件目録二の土地(以下「二の土地」という。)のうち区画番号三ないし五、七、一〇ないし一三、二〇の土地計二〇三一・三八平方メートル(以下「本件土地」という。)を六一四四万四〇〇〇円で売り渡したこと(右契約を以下「本件契約」という。)は、いずれも当事者間に争いがない。

二  成立に争いのない甲第二号証、甲第四号証の一ないし三、甲第一〇号証の二、乙第四五号証、乙第四八号証、乙第四七号証の一、乙第一号証、乙第三号証、乙第五号証、乙第一二号証(原本の存在も)、乙第二五号証、乙第二六号証、乙第三六号証の一ないし八、乙第四四号証、原審取下前被告日本開発コンサルタント株式会社代表者本人の供述により成立の認められる乙第四号証の一、乙第四号証の二の一ないし七、乙第一〇号証、乙第一一号証、乙第三九号証(ただし、原本の存在は争いがない。)、原審証人江原必佐子及び当審証人青木良臣(ただし、後記措信しない部分を除く。)の各証言、右代表者本人の供述並びに原審における控訴人本人の供述(第一、二回、ただし、いずれも後記措信しない部分を除く。)によれば、次の事実が認められる。

1  控訴人は、かつて、部落区長のほか、民生委員、農業委員及び公民館館長等の要職にあつたが、昭和四八年三月七日、住居地に、ブルドーザー工事の請負及び不動産の売買、仲介等を目的とする会社を設立し、その後、自己所有の二の土地について、宅地造成したうえ、昭和四九年五月二八日、同月一八日の地目変更を原因とする雑種地から宅地への地目変更の登記手続をした。

一方、控訴人の長男である青木良臣は、婚姻後も控訴人居宅から約五〇メートルしか離れていない控訴人所有地に居宅を構えて不動産業を営んでいたところ、昭和四八年一二月二五日、日本開発に対し、自己所有の原判決添付別紙物件目録一の土地(以下「別件土地」という。)を代金一億四六四七万円で売り渡し(右売買を以下「別件契約」という。)、同日所有権移転登記を経由したが、同土地は、都市計画法に規定する宅地造成のための開発許可を得られないことが判明し、良臣は、それまでに代金の一部として受け取つていた金員等の返還に窮することになつた。

2  そこで、良臣と日本開発は、昭和四九年五月一〇日、良臣方において、別件契約を解除するとともに、控訴人所有の二の土地の一部について、売主を控訴人、買主を日本開発、代金を一億一四九三万六〇〇〇円とする売買契約を締結し、別件契約の代金の一部として良臣が既に受領していた四〇〇〇万円を右代金に充当することとした。

翌一一日、日本開発の代表取締役井上克は、良臣から、控訴人の意向により右契約の対象土地を変更したい旨の申入れを受けたので、従業員を伴つて、控訴人及び良臣の自宅と道路を隔てた向かい側に位置している現地(二の土地)に赴いたところ、控訴人は、右両名を案内し、良臣に関して愚痴めいたことを言いながらも、目的土地の変更については自ら具体的に指示した。

翌一二日、良臣方において、控訴人の要求どおり、従前の対象土地から一部を除外し、代わりに二の土地のなかの他の土地及び建物を追加し、代金額を一億〇八五七万七〇〇〇円とする内容の売買契約の一部変更契約が控訴人と日本開発との間で締結されたが、控訴人は、右契約に伴う契約書の作成は良臣らに任せ、その場には同席しなかつた。

3  しかし、その後も、控訴人から売買契約対象の変更申入れがなされたりしたこと等から、再び契約内容を変更する必要が生じ、昭和四九年七月二二日、控訴人、日本開発及び良臣は、右三者間の従前の法律関係を最終的に清算し、確定的な契約とするため、売買の対象を二の土地のうちの本件土地としたうえ、これを代金六一四四万四〇〇〇円で控訴人と日本開発の間で売買すること、右代金は同年六月一五日、日本開発が控訴人の代理人良臣に全額支払済みであり、物件の引渡しも完了していることを確認すること及び良臣は、控訴人が日本開発より受領すべき売買代金を控訴人に代わつて受領しているので、控訴人は、良臣に対する右代金の引渡請求権を確保するため、別件土地につき日本開発から良臣に所有権移転登記がされるのを待つて、同土地に抵当権の設定を受けること等を内容とする契約(本件契約)を締結した。

4  ところで、別件土地の位置については、本件契約締結の控訴人から井上に対し、良臣の所有名義とした上で控訴人のため抵当権設定登記をするのと、良臣の所有名義とせず控訴人名義に所有権移転登記をするのと、いずれが税金対策上有利かこれから研究したいので、念のため委任状をもう一枚欲しい旨の申し出があり、井上はこれに応じて、もし右研究の結果控訴人と良臣の間で別件土地を控訴人の所有名義とすることになつた場合にはその登記手続ができるように、そのための日本開発の委任状を控訴人に交付した。その際控訴人は、別件土地の処置について右以上の要求をすることなく、本件契約が前記3のとおりの約旨を定めるものであることを了解した上で、同契約の締結に応じたものである。

5  なお、別件土地の登記に必要な権利証等の書類は既に井上から良臣に対し交付されており、そのことは本件契約の条項においても確認されたところであるが、控訴人は、良臣にも日本開発にも右書類の引渡しを求めたことはなく、また、良臣は、右土地についてなされていた日本開発のための所有権移転登記が解除を原因として抹消された後の昭和五〇年七月二一日、右土地に第三者のため抵当権設定及び条件付所有権移転仮登記をしたが、控訴人は、この様な状態になつて後も、右土地に対する自己の権利を主張して良臣や日本開発に対し抗議を申し入れるなどの措置に出ることはなく、良臣に対しては自己所有の土地を贈与し、日本開発に対しても他の土地の販売を委託するなどして、円満な関係を維持した。

以上のとおり認められ、当審証人青木良臣の証言中及び原審に置ける控訴人本人の供述中(第一、二回)右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らしてたやすく措信できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

三  控訴人は、昭和四九年七月二二日の本件契約の際、井上は、真実は移転する意思がないにも拘らず、控訴人が本件土地を日本開発に売却すれば、日本開発は別件土地の所有権を控訴人に移転する旨告げて欺罔した旨、また、右契約の際、控訴人は右の移転を受けられるものと誤信していた旨、更には、右の契約においては、右土地が日本開発から控訴人に移転することが条件となつていた旨主張する。

しかし、前記認定事実によれば、良臣と日本開発との間の別件契約のいわば後始末のため、控訴人所有の二の土地の一部を日本開発に売り渡すことについては、少なくとも昭和四九年五月一二日に一部変更契約が締結された時以降は控訴人の了解の下に交渉が続けられ、最終的には、売買の対象となる物件の範囲等につき控訴人の意向を十分に採り入れた上で、同年七月二二日、控訴人、日本開発及び良臣の三者が、その相互間の法律関係を確定する本件契約を締結するに至つたものであり、同契約においては、別件土地について、良臣名義に所有権移転登記した上で控訴人のため抵当権を設定することが約定されたものであるところ、同契約締結の際、別件土地の所有権を控訴人に移転するということに関して、井上が控訴人に対し、前記二4で認定した既に履行済みの給付(もし控訴人と良臣の間で別件土地を控訴人の所有名義にすることとなつた場合にはその登記手続ができるように、そのための日本開発の委任状を交付すること)以上の給付をなすことを約するものと誤信させるような言動に出たこと、ないしは控訴人がそのように誤信したことを認めるに足りる証拠はない(前掲控訴人本人の供述中そのような言動ないし誤信があつたかのように述べる部分は措置しない。)。したがつて、控訴人の詐欺及び錯誤の主張はいずれも採用することができない。別件土地の所有権を控訴人に移転することが本件土地売買の条件となつていた旨の控訴人の主張も、右と同様にその事実を認めるに足りる証拠がなく、採用することができない。

四  そうすると、控訴人は本件売買契約に基づき、昭和四九年七月二二日に六一四四万四〇〇〇円の収入を得たものと認めることができる。

そして、右の収入については、被控訴人主張のとおり、必要経費(取得費)三〇七万二二〇〇円及び長期譲渡所得の特別控除額一〇〇万円を控除すべきであり、これを控除すると、控訴人の分離長期譲渡所得金額は五七三七万一八〇〇円となる。

したがつて、被控訴人が控訴人の昭和四九年分の所得税について昭和五三年一月三一日付けでなした更正処分及び右処分に基づいて同日付けでなした過少申告加算税の賦課処分はいずれも適法なものであつたと認められる。

五  以上によれば、控訴人の本訴請求は理由がなく、棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村岡二郎 裁判官 鈴木敏之 裁判官 滝澤孝臣)

物件目録二

<省略>

以上

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